2008年04月26日

Ironman


嬉しいことに日々いろんな来客がある。
将来を悩む若き青年から近所のおじぃまで、話題は尽きることなく楽しい宴は刹那に過ぎ去っていく。
ちょっと印象的だったのはトライアスロンを完走された現役アスリートの方との話。
若かりし自分は、人間は20歳を超えるとフリーラジカルは加速度を増しながら次から次へと障害を引き起こし、DNAに組み込まれた細胞分裂の極限=老いを人生の3/4以上も悪あがきしながら向き合うものだと思っていた。
そしてそれとは別な不可抗力的な死も常に隣り合わせにあるんだというのを自分は20歳の時にLAのストリートで学んだ。
そうやって言い訳しながら、何の根拠も無い「自分は未だ若いんだ」と自己暗示をかけ続けながら、目元の皺や白髪を気にして実は熟成されずに青いままなのは己の心だけだったと気づいたときには、時既に遅しなのかもしれない。
話を元に戻そう。
そのトライアスロンの選手は50代半ばぐらいでいらっしゃったのだが、やはり鉄人は違う。
全国のいろんな競技大会を廻られ、完走するのは当たり前。
宮古島トライアスロンの前日には選手仲間が集まり、半分大人の悪ふざけなのか、なんとおとーりまで回しているではないか。
う~ん、50代でこの体力とは恐るべし。
未だ自分はおとーり1週目で撃沈してしまう。
フィン無しでは身長よりも水深のある場所に行くことは、切実に死と向き合う事であり、一切スイムはだめ。
バイクは鉄の塊に跨りアクセルを回す握力は未だ残っているが、自己推進力を要する自転車なら島を1周しようとするだけでもきっと途中から意識が朦朧とし、間違いなく保良辺りでコースアウトして絶壁から落下するのではないか・・・
ランなんていつ最後に走ったのか記憶が無い。

興味深い話の一つに、競技中に前方にいる選手が用を足したくなったとき、1分1秒を争う選手達はトイレに駆け込んだりする時間も惜しむ、だから経験上事前に「来るな」って解りかわすことが出来るらしい。
最近は水分補給の際に好んでオロナミンCの様なドリンクを選ぶ選手も少なくないとか。
話を聞きながら、いつか自分も出場してみたいなぁっと思いながら聞いていたが、まずは倉庫にしまってあるベンチプレスを組み立てようかな。

素敵に歳を重ねている先輩方を見ていると、今を大切に生きなければと切実に思う今日この頃。
明日は天気も良さそうだし、モノフィンで海に溶けよう。




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2008年04月23日

birth




アスリートの応援にバイクコースと交差する坂道へ、仕事の合間に抜け出して行ってみた。
島をあげての大きなイベントなので、近所の商店も今日はシャッターを下ろして閉まっている。
颯爽と追い風に押され目の前を次から次へと通り過ぎる選手達、交通規制がかけられているにも拘わらず「わ」ナンバーの車が逆走して走っていく。
フルカーボンで選手の体型に合わせて作られたオーダーメイドのバイクは、小指で持ち上げられるぐらい軽量に出来ているそうだ。メタボが最近気になりだした知人も50万円程のそれでも中級者仕様という自転車を買っていたなぁ。

「今日は移動が難しそうだな・・・・」

そういえば今日は大潮、久しぶりにリーフエッジまで散歩しに行こう。
道具は3分で海に行けるようにいつでも準備はしている。
そして5分後にはリーフの上に立っていた。

南海岸のリーフにはそれでも沢山の人達が釣りや潮干狩りを楽しんでいた。
栄螺やタカセ貝ももう取り尽くされたのか、なかなか見つけられてないみたいだ。
逃げ遅れた魚がひっそりと人目につかないように礁池の中でたたずんでいる。
大きなヒメシャコ貝は呼吸をするかのように、ゆっくりとエメラルドグリーンとシルバーからなる外套膜をなびかせ美しかった。
潮も満ち始め、エッジで30分程シュノーケルでドリフトしていた。
潮位が上がるのを待ちきれないのか、エッジには数え切れない程の魚達が集まり、中にはお互いを突きあったりして喧嘩でもしているかの様に見える魚達もいる。
そして次の一瞬、目の前から魚がいなくなった。
「そんなに自分から殺気が出ているのだろうか・・・・・?」
確かに中には旨そうな刺身君も泳いでいるなぁと心の中では思っていた。

突然シルバーから背びれにかけて淡いブルーのグラデーションを身にまとい、弾丸の様なスピードで暴走する大きな一匹のガーラが現れ縦横無尽に捕食している。
右手には射程距離4メートル程の水中銃、もう一度目の前に現れてくれれば狙えるかもしれない。そう頭の中で思考したらすぐに海底深くフェードアウトしていった。
後は水温がかなり高くなってきているので、ゆっくりと時間をかけて海中を散策しながら浜に上がった。もうそろそろウェットも要らなくなるかもしれないけど、ラッシュガードだけは必需品だな。
そして夕方3時過ぎになるといつものおじぃから釣りの誘いの電話がかかってくる。
少々疲れていたが、とことん今日はお祭りなので遊ぼう。

夕暮れ時、東平安名崎のいつもとは違うポイントで打ち込み釣りをする。
おじぃは前回竿先を折ってしまっていたので、今日は浮き釣りに変更するみたいだ。
何度か大きなアタリはくるけど、ばらしてばっかり。ダツやウツボなど外道のオンパレード。
太陽が沈み、辺りは波の音、そして南風が吹き抜ける音だけが聞こえる。
遠くの空ではトライアスロンのゴール地点で花火でも上がっているのであろうか、空が虹色で燃えていて遠目で確認できる。
風も強くなってきたので、さぁ帰ろうかと懐中電灯を探していると自分の影が釣り場の石積みに映っている。
こんな所に外灯は無かったはずだがとゆっくりと東の空へ振り返ってみた。
雲が切れ間から大きな月が顔を覗かし始めていた。そうかフルムーンの光だったのか。
海上には光の道が真っ直ぐこちらに向かっているかのように思えた。

自宅に戻ると今朝深紅色をした美しい蓮の蕾は半分以上閉じている。
睡蓮鉢には数週間前からヤゴが生息していたのは水やりの際に気づいてはいたが、そのすぐ近くで先日エメラエルドグリーンに輝くトンボが壁に留まっていた。
とうとうこの日が来たのか。
「このなかなか生きづらい環境の中で強く生きてくれよ」って羽に触れながら話しかけてみた。
それでも飛び立とうとはしない。結局2日間玄関の壁に張り付いたままだったけど、今日漸くゆっくりと空高く飛び立っていった。




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2008年04月19日

copulation 生命


月が昇り、蛍が飛んでいた。
今年初めて見る蛍だ。
蛍光色の残像と軌跡を残し、ゆっくりと夜空に筆記体の英文でメッセージを残すかのように飛んでいった。
今年も沢山またここに訪れてくれたら嬉しいなぁ~。

蝉が鳴いていた。絶命までの残り少ない時間を、蝉は何を訴えるために鳴いているのであろうかと子供の頃から思っている。

昆虫や虫達・貝類が交尾している。
魚も産卵シーズンを迎えている。

人力マンがホラ貝を吹いている。

インギャーは潮が引き、釣り人がリーフエッジに立っている。

バリ島で自らデザインしたストーンカービングの作品が届いた。

庭で育てているプルメリアが沢山の蕾を付けている。

レリーフが装飾されたお気に入りの睡蓮鉢で育てている睡蓮が太陽に向かって蕾を伸ばしている。

黄昏色に染まる誰一人いない吉野海岸を裸足になり、お客様がはしゃいでいる姿を遠くから眺めている。

夜、日本の北国から素敵なカップルがディナーを食べに来て下さる。
楽しい宴はあっという間に過ぎ去った。

明日は島が自身と極限まで向かい合う選手達で、ヒートするのだろうか・・・・・







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2008年04月18日

power of smile


ここ1週間近く深夜に部屋に戻りソファーに腰を下ろすと同時に気を失うかの様に眠り、そのまんまの姿勢で数時間後に目覚めては仕事に戻る日々が続いていた。
不思議と意識は常にしっかり覚醒していて、程よい緊張感を維持しつつ照りつける太陽に逆らわずこの身を託そうと思って空を海を仰いでいた。

きっと気持ちの良い疲れってこんな感じなんだろうなぁって思い、どうしてだろうって考えていたら、ふっとあることに気がついた。
それはお客様とご一緒している間、仲間と一緒にいる間、村人と黄昏れている間、ずっと笑っていたからだ。

統計学的にも凄まじくわずかな確立で交差する短い人生の中の限られた人と人との運命。
未だ広告宣伝を一切行っておらず、唯一自分が手探りしながらやっと作り上げたHPを見つけ御宿泊頂いている全てのお客様達の旅の多種多様な楽しみ方や狭間見る人生のスタイルには、いつも心を動かされながら今も尚沢山の勉強をさせて頂いてる。
不思議と脳細胞が日々死滅し老いていくこの身体でも、みんなの笑顔はいつでも昨日の事の様に思い出せる。
今年に入っては海外からのお客様も増え、先日はハーフのお子様連れのご家族にご宿泊頂いた。その4歳の女の子はまるで自分の心を全て見透かされているかのように真っ直ぐな大きな瞳で話しかけ、そして無邪気に庭を走り回っている。そして日を追うごとに仲良くなると最後の夕食前の黄昏時に、二枚の絵をプレゼントされた。
シュタイナー教育で使われているクレヨンで描かれたその絵の中には、色々な生き物や自然が描かれているのだが子供にはこういう色や形で見えるのかぁ・・・って長い時間机の上で見入ってしまった。
また宮古でも地デジがはじまったらしく、テレビを見ることが日常ではほとんど無い自分だが、このご家族がインギャーで海水浴をしている際NHKのカメラマンとスタッフが大きな機材を抱えインタビューをお願いしていた。そこにたまたま自分も居合わせたのだが、
レポーター「○○ちゃんは何処から来たの~?」
○○ちゃん「にっぽん~!」
あまりの可愛さに思わず吹き出してしまった。

そして今日の夕方に漸く数時間の空きが出来たので、近所のおじさんと東平安名崎の先端灯台横の絶壁から二人並んで釣り糸を垂れる。
自分より20歳以上年上だけど、凄まじく元気で日常ネタから世界情勢の話まで尽きること無く太陽が沈み月が昇るまで話続けていた。








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2008年04月11日

ルーチンワーク


インギャーのリーフエッジ、メーター近いブダイの群れが七色に光り輝きながら円を描くように泳いでいるのをシュノーケルしながら、ただただ心を奪われ眺めていた。
海から上がると、追い込み漁で捕れた魚をお姉達がさばいている。
今回はあまり獲物のサイズは大きくなかったみたいだが、それでも新鮮な魚は旨いだろう。
よく訪れるお客様やあまり釣りをしない移住者の方からは、旨い刺身はここ宮古でも食べられるの?って聞かれるが、実際旨い魚は沢山いる。
活締めした魚は一日冷蔵庫に寝かせ、オーガニックのオリーブオイルに塩とケッパを散らせて刺身で頂く。この季節にはトマトのポン酢ジュレもまた締まった白身には相性が良い。グルクンも新鮮ならば、刺身で食べられるし、唐揚げに飽きたらアクアパッツァにして食べるとこれまたワインが進む。
インギャーの入り江の反対のリーフサイドを泳いでいると、イカの大群やタマン・イラブチャー・アーガイなどとよく出会す。
大型の魚が単独もしくはペアでゆっくりと貫禄ありげに遠くからこっちに向かって泳いでいる姿を見ると、それはまるでリングにこれから登場するファイターの様に思わず頭の中でBGMが鳴り響き心拍数も上がる。
「あ~今夜の刺身だ~」って短い銛を真っ直ぐに近づこうとしても、ぎょろっと睨みつけられていつもの様にまた素通りされてしまう。
う~ん・・・やはり5メートルの銛を自作するしかないのか・・・・

夜はオーガニック農家の方達が新しい商品開発の為の相談にやってきた。
やはり野菜を上手に育てても、販売ルートを作り出す手段はなかなか難しいとの事でどうにか彼らの力になれないか自分も頭を回転させる。まずはひと味違うラベルやパッケージデザインから考えてみよう。この先自作PCはフル稼働になりそうだ。

そして毎晩のルーチンワークとなっている映画を鑑賞する。
今年は短編でも良いから宮古島で映画を撮ろうと仲間達と話し合ったのを思い出し、何か身近で面白いスクリプトが書けないかと深夜一人アイデアを絞り出す。
懐かしの8ミリカメラとフィルムも倉庫から数台いつでも使えるように準備してある。
多分ハイビジョンカメラで撮影して、編集の際にフィルターをかけて、程よい質感を出す方が良いのかな??でも8ミリの寂寞感や映像の深さまでデジタルで表現出来るのだろうか?
まぁこの年齢になって、コーヒー一杯で映画制作の話を何時間でも時間がつぶせるなんて思いもしなかった。後はどんなに駄作であろうと、行動し皆で作り上げよう。それがきっと一番何かを作り上げる時には大事な気がする。まだ他にも地元密着型のエンターテイメントを考えているので、皆の目に付く日もそう遠くはないだろう。

最近アイデアに行き詰まった時は、苦労して運んだグランドピアノを鳴らしてみる。若かりし時は狂った様に弾いていた時もあったが、もうかれこれ5年以上も一緒にいる時間はほとんどなかった。
ただ調律は沖縄から宮古島に数ヶ月に一度来られる調律師の方にこの前して頂いた。
やはりこれからの湿気対策を今年もどう乗り切るのか、電気代がまた心配だなぁ~。
それより少しずつでもいいから、またピアノの前に座ろう。
動きの鈍いこの運指に、とてつもないストレスを抱えながらでも・・・・・





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2008年04月09日

Turbo cornutus vs human being


4/6 13:31 -5cm
4/7 14:11 -16cm
4/8 14:53 -20cm
サニツの週末、ここ南海岸は上野ドイツ村周辺からインギャーまで、海岸道路には車が縦列で長い帯を作っていた。海に目を向けるとリーフには子連れの家族、仕事の途中なのかユニフォーム姿に網袋一つ手に持つおじぃ、まるでムスリムの女性の様に全身を紫外線対策の為に完全防備してるおばぁ、エッジでひたすら大物の魚を狙う釣り人など賑やかな風景だった。

徹夜続きなので眠い目をこすりながら容赦なく照りつける太陽の光を浴びながらゆっくりと海岸線沿いを走り、何処から海に入ろうか考えていた。

サニツが近づくと、話題の中に今年はタコが少ない・さざえの当たり年だとか、もずくは何処何処のポイントが良いなどと耳にする。
皆海からの恵みを待ち遠しくしているのだろう。
近所のおじぃ曰く、さざえ捕り名人になるとそれはまるでアクティブ・ソナーやバイオセンサー・赤外線機能付き動体視力補助装置などを持ち合わせているかの如く、10メートル先のさざえも見つけられるという。
少々誇張されている話だろうなぁって思いながら、分かる方なら理解して貰えると思うが、結局きっとその名人は背がすごく小さいに違いないと勝手に結論づけてしまった。
身長182cmの自分がもしさざえ捕りをするなら両膝に高感度小型CCDカメラを付けて、その映像に何か貝類やタコなどに反応がありそうなフィルターをかけ、無線でオークリーのサングラスに転送しモニタリングしながら望むだろう。
ちょっと非現実的でSFっぽく、趣がないな・・・・・・・

だから獲物を探しに行くというよりはあの美しいリーフエッジの珊瑚の花畑に立ちたい、ひょっとしたら未だ見ぬ海のパリ(畑)に出会えるかもしれない、そんな自慰的ロマンティシズムの方が未だ強い。

普段はサーファー仲間が浮かんでいる場所も所狭しと人が獲物を探し回っている。

ちょっと今日は遠くまで歩いてみようか・・・・・

途中大潮の干潮にも拘わらず、腰まで海に浸かりながら延々と歩き続けた。

耳を澄ませば「パチッ、パチッ」っと少しずつ大気に顔を出し始めたリーフがビートを刻むかのように音を鳴らし出す。
エッジの切れ目には潮が押し寄せては引く度に、まるで呼吸でもしているかのように水面が大きく上下し原色の珊瑚が揺れている。

背中にはいつでも泳げるようにと愛用のワープフィンとシュノーケル・マスクを背負いゆっくりと一歩一歩を珊瑚を踏まないように確かめながら進んで行く。

1時間近く歩いただろうか、一心不乱に集中して歩いていたせいか振り返ればリーフの群衆は遙か遠くほとんど見えなくなっている。
流れる雲に隠れ続けていた太陽が突然姿を現し、ふっと我に返って周りを見渡した。
そこには碧色の海面に12色のクレパスでは決して表現できない色とりどりの珊瑚達が姿を現していた。

「もうこれ以上進めない・・・・・・」

美し過ぎるのだ。
珊瑚を踏まずに次の一歩を踏み出すスペースはここからはもう無い。
深く深呼吸しゆっくりと背伸びした。束の間の休憩を立ち止まったまま取ろう。
やがて潮が少しずつ満ち始め、さぁ帰ろうとしたその時足下近くのリーフの狭間に何かソフトボールの様なモノが挟まっていた。
「あっ栄螺だ。」
こんなに大きなモノはかつて見たことが無い。手を伸ばして取ろうとしてもリーフの出口が狭くて取り出せない。こいつはどうやってここに進入したのだろうか?移動も出来ずに成長してきたのだろうか・・・・?
諦めてしゃがんだ姿勢から立ち上がろうと周りを見渡した瞬間びっくりした。
立った姿勢からはまったく気づかなかったが、まるで囲まれているかのように珊瑚の裏や狭間で栄螺は身を潜めていた。

貝の好きなおばぁはもう海には入れない。
そのおばぁの為に少しだけ海の恵みを分けて貰う事にしよう。
「ありがとう」
数個だけ拾いまた延々と来た道をゆっくりと戻り始めた。





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2008年04月06日

「太陽が眩しかったから」


暑い。
今日は若き宮古中小企業家達とのミーティングの予定が午後にあり、お客様の空港送迎が終わるとまだ時間が少しあったので、久しぶりに前浜港に車を向けた。
カミュの小説で描写される太陽はこんな感じなのだろうかと物思いにふけながら、汗をぬぐい車を波止場の先端に停める。

透明度も高く遠くでは小さな漁船を操り素潜り漁をおじぃがしていたのが見えた。
ビーチには家族連れや観光客がこの東洋一と言われる純白の砂浜に腰を下ろし、またある者は早くも水着一枚で浅瀬の所でゆらゆらゆられている
背後から自転車の音がした。
振り向くと地元の中学生の男女が楽しそうに会話をしながら次から次へとやってくる。
「あ~潮も既に引いてるから、今日は釣りにはならないさ~」
釣り竿をガリレオスティックの様に振り回しながら少年は海を見ながら仲間に声をかけた。
「そういう時はこれしかないだろ??」って次の瞬間少年達は波止場の先端から前転宙返りや後方宙返りをしながら海に私服のまんま飛び込んで行く。
飛び込んでは上がり、そしてまた飛び込んでの繰り返しで、ひとしきりジャンプしたら仲間同士海の中で笑いあっている。

良いなぁ、今日は水温も高く気持ちいいだろうなぁって思いながら、しばらくは子供らの黄色い歓声を聞きながら自然の音に耳を傾けまったりといていた。

しばらくしてエンジン音が前浜にそよぐ波と風の静けさを打ち消すようにけたたましく鳴り響き、ふっと我に返った。
振り返ればそこには大型のPWCが3台程浅瀬に集まっていた。

幼い頃から海の近くで育ち、高校の時はウィンドサーフィン、学生の時はCAの西海岸で朝晩と一日2回サーフィンをするほど熱狂し、ワールドツアーと称していろんな国を廻って波と戯れていた。今はモノフィンやロングフィンを使い素潜りに夢中になっている自分としては。どうしても過去に波待ちしている時や釣りをしているとき、容赦なく目の前を重量150キロ以上、全長3メートル前後の小さな乗り物が爆音を立てて時速70キロ以上のスピードで弾丸の様に目の前を通り過ぎるのを見るのが辛かった。

さすがにここ前浜ではマナーもしっかりしそんな事はないだろう。最近は事故も多発し琵琶湖の件もあるし、宮崎市消防団「水上バイク隊」のニュースはまだ新しい記憶だった。
そう思った次の瞬間、すぐそこに海水客や飛び込んで遊んでいる子供達がいるにも係わらず、アクセル全開でビーチから飛び出していく。
またある一台は浅瀬を意図的に走っているではないか・・・・・

そしてまた凄まじいスピードで戻ってくるPWCが、子供達に気づいているのかぎりぎりの所まで迫ってくるのを手に汗握ってはらはらしていた。
もし子供が貝でも拾おうと水中に潜っていたら、もしトライアスロン選手が練習の為に少し沖で目立ちにくい黒のウェットスーツを着て泳いでいたら・・・・・
それからも数台トレーラーに乗せてまた続々とやってくる。
幾ら4ストロークが主流になった今、排ガスにより水質汚染が以前の4分の1になったところで、TPOとマナーをわきまえなければ環境問題以前に必ず事故はいつか起きるであろう。観光客相手にしろ、個人の趣味にしろ、ハンドルを握っている彼らはほとんど自分と年齢が変わらない年代のおやじさん達であった。
前浜はPWCのレースも開催されている場所なので、今後とも本当に宮古にて開催が必要ならば、今は事故の無いよう心から祈るばかりである。

ミーティングも終わりあまりにも夕焼け空が綺麗なので、釣り竿一本もってインギャー近くの磯に行く。今日は打ち込みで置き竿なので、アタリを待つばかり。そのうち同じ部落のおじさんも合流するらしい。
あまりにも空が碧いので、足場の良い石灰岩の上で仰向けになりなりながら雲を見上げていた。
そういえば小学生の頃、一人で道路のベンチや学校の朝礼台・公園のネットの上など横になれるスペースがあれば何処でも仰向けになり、流れゆく雲をずっと見ていたのを思い出した。あの頃の自分は未だ、この身体の中で生き続けているのであろうか・・・・・

  

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2008年04月04日

taxi?


黄昏時にまたいつもの南海岸線をゆっくりとオート三輪を走らせる。
島の中ではやはり珍しく目立つのか、釣りの帰りに自転車に乗った子供には追いかけられ、子連れの親子には道ばたから手を振られる。
恥ずかしくもあり、嬉しくもあり、照れながら運転していると、すぐに4ストロークに乗せ替えたエンジンは低速になると車体全体を揺るがし、シフトアップをせがんでくる。
そうこうしていると、来間大橋を渡り、竜宮展望台にたどり着いた。
車より少し離れた公園のベンチで一息ついていたら、老夫婦が懐かしそうに車に近寄り微笑んでいた。そして携帯のメールでおじぃがおばぁの写真を車と一緒に撮っていた。
近寄って「おじぃ、おばぁ、後ろに乗ってみる?」って聞くと目を輝かして「乗りたいけど、夕食に戻らないといけない。今度乗せてね~絶対」って言って手を振って仲良く帰って行った。

昔まだ幼い頃、ダイハツのミゼットというオート三輪がまだ公道を走っていた。
自分も幼いなりに、出会う機会が極端に少ない車に、既にノスタルジックな気持ちを抱き、もうこの三輪車はもう少しで道路から見られなくなるんだろうなぁって思っていた。

家路の途中、インギャーの入り江近くの東屋でおじぃ達と話を30分程した。
自分はおじぃやおばぁ達が大好きだ。
釣りをしてたり、散歩していたりすると、知らない人でも長話になってしまう。
真っ黒に日焼けして、土で汚れた作業着で汗を拭きながら、屈託の無い笑みを顔に着ている彼らの話す、これまで培ってきた生活の豊富な知恵にはいつも感動せざるを得ない。そして素朴で飾りっ気のない優しさにはいつも心洗われる気分になる。

この島を根底で支えているのは彼らであり、彼らもフォーカスを少し引いて考えると蒼い海よりも本来はもっと儚く眩しい程の島にとっての大切な宝なんだろうな



今ならまだ乗れますオート三輪。お泊まりはプライベートリゾートホテルRENN  

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